FromJMM
[Japan Mail Media] 以下、ニュースレターを講読しているJapan Mail Mediaの内容ですが
色々な人に知っていただきたい内容だと思い
こちらに記させて下さい。
■ 『平らな国デンマーク/子育ての現場から』 第70回
「ふるさとの変化」
■ 高田ケラー有子 :造形作家 デンマーク北シェーランド在住
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■ 『平らな国デンマーク/子育ての現場から』
第70回
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「ふるさとの変化」
前回、「学習量に対応する運動量」の中で、1年ぶりに帰国して、日本の社会
全般
のモラルやマナーの低下を感じる話を少し書きましたが、ふるさと大阪について
も、
特に教育現場の変化を強く感じました。
学力の順位ではなく、先生も子供もお互いが満足できる環境で、教育現場が生
き生
きとしているという点で、デンマークは世界に誇れる国だと感じています。
そして学力が何位とかいう結果より、学校生活に満足していることの方が大切だと感じて
いる
親も多く、そんな親の一人であるデンマークに住む日本人として、ふるさと大阪
の教
育事情について思うこと、感じたことを今回は書いてみたいと思います。日本の
みな
さまにはご存知の情報ばかりかもしれませんが、デンマークから里帰りした日本
人の
目に映ったこととして書いてみます。
大阪の教育現場の現状については以前から少しづつその変化を感じていたので
す
が、今年はその変化にちょっとした危機感を抱きました。このままでは大阪はだ
めに
なってしまうのではないかと。
大阪では、この8月から教師の給料が10%カットされ(年齢層によってパー
セン
テージに違いがあるそうですが)向こう3年間そのままのようですが、橋下知事
が財
政回復のための手だてとしてしていることは、大阪の将来を担っていく子供たち
のた
めになっているのだろうか、と素朴な疑問を抱きます。
大阪に見切りをつけた教員は(北海道や兵庫県でも給与カットされているよう
で
す)採用試験を受け直してでも条件のいい他府県に移動している現状や、給料が
カッ
トされる前の7月末で退職した多くのベテラン教員たちがいること。若い教員が
スト
レスから鬱になるケースも多いことや、またそうした場合に代替の補充教員を得
よう
としても、担任を持ってもらえるような助っ人もなかなか見つけられない現状を
、ま
ずは立て直すべきではないかとつくづく思いました。
そんな中で、学力向上の手だてとして、学力テストの結果を公表して地域ぐる
みの
教育再生を図る、という橋下知事の考えに、学力向上以前の問題が山積している
こと
はどこで解決するのだろうかと単純に思ってしまいます。公表・非公表にこだわ
って
おられるのは、公表しないと子供が勉強しない、というロジックがあるようです
が、
勉強したいと思い、学校は楽しいと思える環境づくりが先にあるのではないとこ
ろ
に、問題点があるように思います。
知事の記者会見も読んでみましたが
(http://www.pref.osaka.jp/j_message/chiji-kaiken/file/20080910.html)、
あまりにも長い会見なので、要点が掴みにくく、『テストの結果が悪いからデー
タ分
析して勉強させよう、それを地域ぐるみでやりましょう、そのためのデータの公
表は
予算付けのためにも必要です』と言っておられるように聞こえるのですが(私に
はそ
う受け取れました)、大阪の教育現場にまず必要なことは、教師が意欲を持って
働け
る環境を作ることと、子供たちの人格形成であり、結果を公表することでお尻を
叩い
て勉強させることではないと思いました。
もちろん、少人数制やその他の教育環境を考えた取り組みを実現するためにデ
ータ
を元にした予算付けをしたいという知事の意欲がわからないわけではありません
が、
この記者会見を読んでいて、データを分析してより多くの商品を売るための戦略
なら
よくわかる、というような気がして、そこに肝心の主体となる子供と教師の姿は
見え
ませんでした。
部分発言だけを取り上げるのはよくないのですが、上記の記者会見の知事の言
葉の
中で『だから、小難しい話じゃなくて、単純にテストの成績が公表されるされな
い
で、やっぱりそれは世の中に公表されない、親に知られないというんだったら、
それ
は子どもなんて勉強しないという単純な発想です。』という発言がありましたが
、子
供を信頼していない大人の発言で、決めつけていると感じますし、親にいい顔を
した
いから勉強するのではなく、自分のために勉強するのだということが全く度外視
され
ていることに、大きな違和感を感じました。
数字が大切でないとはいいませんが、子供はひとりひとり違うし、教師も人間
で
す。学力の回復も必要なことでしょうが、きちんと挨拶のできない子供でも学力
が伸
びればそれでいいのでしょうか。
モラルやマナーについては、家庭でも親がしっかり対話の時間を取ってお手本
を示
すべきだと思うのですが、保護者が何でもかんでも学校に依存する形も大きくな
って
いるように思います。お手本を示せない親が多くなって来ているということも言
える
のかもしれません。
私も大阪出身で同じように大阪の子供たちの将来を考える一人の人間として、
数字
で結果を出すことだけが改革ではなく、教育現場にいる人たちが納得して、満足
し
て、やる気と意欲を持てる環境を作って行くことが、目には見えなくても、まず
先決
ではないかと思います。それがひいては学力の向上にもつながると思いますし、
見え
ないものの中にこそ真実が隠れているように、知事が目指していらっしゃる目標
に近
づくための方法論は現場の意識とずれているように思えてなりません。給料が減
り続
け、やる気の萎えた先生たちに何が期待できるのでしょう。
全国的にそうなのかどうか知りませんが、大阪の学校では夏休みでも生徒が来
てい
ない学校に毎日出勤しなければなりません。それが一般企業なら休みはないと言
う理
由ならこれまた平等の意味をはき違えているとしか言えません。自動車通勤は自
家用
車を公の土地に無料で駐車すると言う観点から禁止。そうした理由で市民から苦
情が
来る。公務員という立場であることを鑑みても、教員の行動をそうして見張って
いる
人がいる事自体、歪んだ社会であるようにも思ます。そのことで、子供にどうい
う迷
惑や影響があると言うのでしょう。そういう考え方ができないところにも問題が
ある
ように思います。
ここ約10年の間、現状維持どころか、大阪の教員の実質給料は減り続けてい
るそ
うです。その中で今回のさらなる10%カットが多くの教員のやる気をそいでい
るこ
とは否めないと思います。
このままでは大阪で教師になりたい人がどんどん減って行って、数の低下は質
の低
下を招いて行く結果にも繋がりかねないのでは、と教育改革の根本を語り直す必
要性
を感じます。
「子どもが笑う」をスローガンに当選された橋下知事。9月5日に「教育非常事
態宣
言」を発せられ、9月12日には「大阪の教育力向上プラン」の素案を公表。1
0月
11月には「教育日本一をめざして」という府民討論会などの予定もされている
よう
です。1年ぶりに帰国して、橋下知事になってから最初の帰国で大阪の変化を教
育現
場の危機感として感じた訳ですが、知事が感じている危機感とは、ちょっと内容
が違
うのと、その解決方法に違和感を感じています。
それはおそらくなぜこうした危機的状況になっているのかという要因の捉え方
が違
うからだと思いますが、知事の言葉の中で「ダメ教員の排除」と言う言葉が盛ん
に出
て来るのも気になるところです。教員採用試験にちゃんと受かっている人が教員
に
なっているはずで、選んだ側の責任もあるでしょうし、また教員になってからさ
まざ
まな要因から意欲をそがれ、ストレスを感じ、鬱になった事例が含まれることを
思う
と、社会が生み出した現象とも言えるように思うのです。最初からダメ教員だっ
たと
すれば、それこそ選ぶ側に大きな問題があると言うことですし、なぜダメ教員を
生ん
でしまっているのか、ということを根本的に解決しなければ、いくら排除したと
ころ
で(どうやってするのか疑問ですが)、同じことの繰り返しになるでしょう。そ
もそ
も「排除」という表現も嫌な感じです。まるでゴミ扱いのようで、人格を無視し
てい
る気がします。
教員の質の向上は言うまでもないのですが、夏休みに不必要な出勤を強いるこ
とよ
り、教員にゆとりと自己研修の機会をしっかり与えることで、教員も心豊かに意
欲を
持って指導できるのではないでしょうか。昔はこんなことなかった、ということ
から
しても、私が子供の頃は夏休みは先生もしっかり休んでいたし、その中でも休み
中で
も先生と学校で遊んでもらった思い出もたくさん残っています。40年ほど昔に
戻れ
ばいい、単純にそんな気もしてきました。教育力向上プランの中の「はぐくみた
い
力」の中に、「表現力」や「創造力」「想像力」などの言葉が見当たらないのも
、残
念なところであります。
道徳と言う授業は今でも活用されているのでしょうか。社会全体のモラルの低
下を
感じる中で、道徳の授業をまずは楽しいものにする、というのが実は一番ネック
にな
るのかもしれません。
先日、息子の学校の学童の保育師が勤続25周年を迎え、平日の午後3時から
5時
くらいまで、学童の施設内でワインやビール、お茶にコーヒー、ケーキにおつま
みな
どを用意してお祝いのパーティーがありました。息子が4年生になって、学校へ
の送
り迎えが必要なくなったのはいいのですが、学校に足を運ぶのは親の勤めでもあ
るの
で、こういう機会はみな逃しません。
ここぞとばかりに息子と同じクラスの保護者も多く参加して、和やかなひとと
きを
過ごしました。こうしたことができる教育現場、というのは、人と人が信じ合い
、い
い関係を保って行く上でとても大切なことだと痛感します。お祝いにやって来た
保護
者は、みな手に手にお花やワインなどしっかりプレゼントも持参しており、保護
者た
ちにとっても彼の存在が大きいことも伺い知れました。私は自分の作品のポスト
カー
ドをセットで持参し、息子と二人からのお礼とお祝いのカードも添えました。
抱き合ってお祝いする。そんなことが学校でも行われる。学校でお酒を出すな
んて
とんでもない、なんて誰も言いませんし、子供たちもしばらく親同士が話してい
る中
に割り込んで、ジュースやお菓子をむさぼります。自分の祝い事を自分で企画し
て大
勢を楽しませるのも、デンマーク人らしい振る舞いです。
余談ですが、今年、学研都市線の車内アナウンスで「次は~、オオサカテンマ
ング
ー」という案内を聞いた息子は、「かあちゃん、次、オオサカデンマークや言う
てる
で!」と興奮して教えてくれました。大阪とデンマーク、息子にとっても私にと
って
も両方とも大好きな場所です。いいものを安く買った自慢をするところなど、人
の感
性が似ている部分もあります。なにか大阪にとっていい刺激になることがないか
、大
阪人として考えたいところです。さしあたって、歳出削減のあおりを受けるのは
、教
職員ではないと、デンマークに住む日本人として思うのでした。
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高田ケラー有子/Yuko Takada Keller:造形作家
京都市立芸術大学大学院修了。日本在住時よりヨーロッパ、アメリカなどで作品
を発
表。1997年よりデンマーク在住。近年はデンマークを中心にヨーロッパ、日
本で
作家活動。キューレータとしても、日本のアーティストをデンマークに紹介して
いる。
コミッションワークとして、東京都水道局「水の科学館」、岡山県早島町町民総
合会
館「ゆるびの舎」に作品を手がけている。個人サイト:
http://www.yukotakada.com/
著書に『平らな国デンマーク~「幸福度」世界一の社会から~』NHK出版生活人新
書
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